コミクエ@comicquest
お題: 「桜並木の下で

街灯はポツポツとついていた。道に散っている桜の花弁を靴の底でずるずると引き摺りながら歩く。24時を回る前に帰れるのは珍しい。夜飯を決めるのは面倒くさい。人通りはほとんどない。絵を描くのは昔から大好きだったけれど、今は手の腱が痛んでペンを動かすのも億劫だ。作業が遅いと怒鳴られる。昔は花見ではしゃいでいたけれど、桜並木の道を歩いても、心はビタリと動かない。家に戻っても一人で寝るだけだ。何かしないともったいない気もするけれど、スマホゲームくらいしかやる気が起きない。 ベンチがあったから、座ってみた。街灯にぼんやりと照らされていた。靴底を見ると、桜の花弁が貼り付いていた。ぐちゃぐちゃに破れた挙句に泥が混じって茶色くなっている。抗いがたい衝動があって、iPadを取り出して靴底を描き始めた。飢えた犬が餌を貪るように描いた。こんな状態でも描くのを辞められないなんて、それじゃあまるで呪いじゃないか。描き上げると少しだけエネルギーが湧いてきて、歩けるようになった。ズルズルと足を引き摺りながら家に向かう。私は絵を描くゾンビだ。絵の上手いゾンビだ。そんなことを思うと、次はゾンビの絵が描きたくなった。