お題: 「古い写真の裏に書かれた文字」
いたずら心で、母の部屋を探っていると、アルバムが出てきた。中身は綺麗にファイリングしてあり、赤ちゃんの写真がたくさんあった。父はプロのカメラマンだったけれど、この頃はまだ練習中なのか、ピントが上手く合っていなかったり、手ブレが生じていたりして、綺麗な写真はあまりない。それでも写真に映る私はいつも笑っていて、幸せな時間を過ごしていた事がわかる。なんだか少し気恥ずかしい。写真の母は若くて、みたことのない表情をしていた。母は優しいけれど、どこか達観したような雰囲気がある。この写真の母はどちらかというと無邪気な感じだ。写真を見ていると、ふと違和感を覚える。この赤ちゃんにはほくろがないのだ。母が昔見せてくれた私の写真には、目元にほくろがあった。しかし、この写真の子にはほくろがない。この子は一体誰だろう。私は一人っ子だから、家族ではないのかもしれない。写真の裏を見ると、「1997.4.8」と書いてあった。私の誕生日は「2000.8.2」である。この子は誰? ギシギシと階段を上がってくる音が聞こえるけれど、私はアルバムをめくり続けた。カビの匂いがツンと鼻の奥に沁みた。